〈産地情報〉 かんぴょう

かんぴょうの産地を訪ねて(栃木県河内郡上三川町)

■生産農家・中里様の畑へお邪魔します
8月中旬、河内郡上三川町のかんぴょう生産者、中里様の畑にお邪魔しました。青々とした葉が広がるかんぴょう(夕顔の実)畑。毎年、真夏の太陽の下で夕顔の実(フクべ)の収穫作業が行われます。が、今年は少し事情が違うようです。
実は今年の夕顔の実の生育量は例年に比べ良くありません。その原因は栽培途中での長雨と冷夏。 雨が続くと畑に水が浸かり、フクベが腐ってしまいます。腐敗を防ぐために中里さん達は土の表面にわらを敷き、雨対策を施しますが、それが追いつかないほどの今年の雨でした。
したがって、今年の生産量は例年の3〜4割と減産の見通しです。

天候不順の影響は、夕顔だけではありません。なす・すいか・かぼちゃなどの夏野菜の生産がいずれも例年と比べてぐっと減ってしまいました。

かんぴょうは、夕顔の実をクルクルと剥いて乾燥させて作りますが、この乾燥は天日、もしくは乾燥機で行われています。生産農家のご自宅庭には乾燥機つきのハウスがあります。今年は雨が多かったため、この乾燥機の出番も多くありました。

「いつもだと墓参りに行けないほどの忙しさなんだけどね。」と中里さん。この日も曇り空です。

腐敗対策のためのわらの上で丁寧に育てられた夕顔の実。まだ、十分には育っていない、小さなフクベです。かんぴょうとして皮むきを施すには、もう少し時間をかけて大きくします。

■かんぴょうむきが始まります
冷夏・多雨のなかでも十分に育ったフクベは、いよいよ皮むきにかけられます。

芯棒にフクベを刺して回転させ、皮むきを当てると・・・あっという間に皮がむかれました。

表面の青い皮をむき終わったフクベ。キレイな形です! ここからは実を剥いていきます。リボンのように、同じ幅で剥かれていくのは、まさに職人の技。

まるで飛ぶように帯状に剥かれるフクベ。あっという間にここまで剥かれました! 種の部分を残して、全て剥き終わりました。夕顔の皮むきは午前2時〜3時。朝の早い夏とはいえ、暗いうちから始まる収穫、皮むき、乾燥という作業は重労働。 年々、少なくなるかんぴょう生産者の中で、中里さんは今年も伝統の手法でかんぴょうを作ります。

リボン状に剥き終わった夕顔をすぐに干していきます。ご家族での息の合った作業です。 ハウス内での乾燥作業 自宅庭にある乾燥用のハウス

ハウスの中で約10時間乾燥させた後、ずいぶん細くなります。 風通しが良くなるように扇風機が備えられています。雨の日は乾燥機を使うことも。

硫黄を使用しての漂白作業も自宅敷地の小屋で行います。
自然色(漂白しないもの)はそのまま出荷し、漂白したものは自宅の保存部屋で一時保存します。

自宅庭にある保存部屋。 中でかんぴょうが出荷を待っています。

■訪問を終えて
ちらし寿司や海苔巻きの具として欠かせないかんぴょう。
夕顔の栽培に始まって、夜明け前からの収穫作業、まるで帯のように均一に剥いていく熟練の手仕事、これら全てによってかんぴょうは出来上がります。自然相手の仕事、今年の生産量は大変な落ち込みのようですが、それでもしっかりと育ったフクベを丁寧に加工し、品質の良いかんぴょうを作ろうという中里さんの想いがずっしりと伝わってきました。

上三川町の生産者の皆さん、ありがとうございました!